スカッシュがオリンピックに採用される可能性は!?これまでの経緯と今後の展開

四方を壁で囲まれた空間で、壁を介して高速のボールを打ち合うスポーツ、スカッシュ。

テニスの2倍ともいわれる運動量でダイエット効果も高いと、徐々に人気を高めているスポーツですが、これまでオリンピック競技への採用はありません。

スカッシュとオリンピックはどのような関係なのか、今後オリンピック競技に採用されることはあるのか、スカッシュが迎える今後の展望についてご紹介します。

目次

これまでの経緯

スカッシュはこれまでオリンピック競技の候補に挙げられながらも、未だに正式競技に選ばれたことがありません。

オリンピック競技への採用に向け、どのような歴史をたどってきたのでしょうか。

2012年候補への選出と落選

2005年7月、第117次IOC総会が開催され、実施競技から除外された野球・ソフトボールに代わり、新たに2競技が選出されることとなりました。

候補となったのは、

  • ゴルフ
  • ラグビー
  • 空手
  • ローラースケート
  • スカッシュ

の5競技であり、投票の結果スカッシュと空手が上位となりましたが、規定の得票数に足りず正式種目化は見送られました。

その結果、2012年ロンドンオリンピックは規定で定められた夏季オリンピックの最大競技数28に満たない26競技で行われることとなりました。

2016年の候補に再選出されるも落選

2009年10月に行われた第121次IOC総会では新競技・復活競技として以下の7つの競技が候補として挙げられました。

  • ラグビー
  • ゴルフ
  • 空手
  • スカッシュ
  • ソフトボール
  • 野球
  • ローラースポーツ

その結果多くの得票数を得たラグビー、ゴルフが採用。スカッシュはまたも採用が見送られています。

3度目の正直なるか?2020年東京オリンピックでは……

2013年5月、IOC理事会により、コア競技から除外されたレスリングを含む8つの競技が新候補競技として選出。

この中からレスリング、野球・ソフトボール、スカッシュが最終候補として選出されました。

日本国内では美女アスリートとして人気のスカッシュプレイヤー・松井千夏が五輪競技入りをアピール。

マスコミを通じ、世間にスカッシュの存在を広めスカッシュ採用の機運を高めるキャンペーンを展開しました。

しかし続く9月に開かれた第125次IOC総会において投票が行われ、追加競技がレスリングに決定し、一度はスカッシュ採用が見送られます。

2015年に入り、6月に組織委員会が提案できる追加競技の一次選考を実施。以下の8競技が候補に上がります。

  • 野球・ソフトボール
  • ボウリング
  • 空手
  • ローラースポーツ
  • スポーツクライミング
  • スカッシュ
  • サーフィン
  • 武術太極拳

しかし同9月の協議においてスカッシュ、ボウリング、武術太極拳の3競技は提案競技から除外。

3度目となるオリンピック競技採用の夢も露と消えてしまいました。

オリンピック競技に採用される条件

夏季オリンピック競技に採用される基準として、2004年版のオリンピック憲章では、「男子では4大陸、75か国以上、女子では3大陸、40か国以上で、広く行われている競技」という基準が定められていました。

2007年の改定の折、25の種目を「コア競技」として定義。

1回の大会で行われる競技数は最大28までとし、残り3つの追加競技は、以下の国際競技連盟が統治する競技の中から選ばれることとなりました。

  • 国際陸上競技連盟 (IAAF)
  • 国際ボート連盟 (FISA)
  • 世界バドミントン連盟 (BWF)
  • 国際バスケットボール連盟 (FIBA)
  • 国際ボクシング協会 (AIBA)
  • 国際カヌー連盟 (ICF)
  • 国際自転車競技連合 (UCI)
  • 国際馬術連盟 (FEI)
  • 国際フェンシング連盟 (FIE)
  • 国際サッカー連盟 (FIFA)
  • 国際ゴルフ連盟 (IGF)
  • 国際体操連盟 (FIG)
  • 国際ウエイトリフティング連盟 (IWF)
  • 国際ハンドボール連盟 (IHF)
  • 国際ホッケー連盟 (FIH)
  • 国際柔道連盟 (IJF)
  • 世界レスリング連合 (UWW)
  • 国際水泳連盟 (FINA)
  •  国際近代五種連合 (UIPM)
  • ワールドラグビー (WR)
  • 世界テコンドー連盟 (WTF)
  • 国際テニス連盟 (ITF)
  • 国際卓球連盟 (ITTF)
  • 国際射撃スポーツ連盟 (ISSF)
  • 世界アーチェリー連盟 (WA)
  • 国際トライアスロン連合 (ITU)
  • 国際セーリング連盟 (ISAF)
  • 国際バレーボール連盟 (FIVB)
  • その他、 IOC の承認するその他の IF(国際競技連盟) が統括する競技

スカッシュはオリンピック憲章に記載される競技ではありませんが、世界スカッシュ連盟 (WSF)がIOC承認国際競技団体連合(ARISF)に加盟しているため、主催国の五輪組織委員会等から推薦を受けることで実施競技に選出される資格を持っています。

現在の状況

かつてのオリンピック憲章にあったように、オリンピックの競技種目に採用されるためには世界中で広く愛好されていることが条件に挙げられます。

スカッシュを統治するWSFは、185か国で2,000万人に愛好されていると公称。

パワーだけでなく技術が重視されることから幅広い年齢層でプレイでき、男女の競技人口が偏らないという強みを持つとWSFは主張しますが、2012年以降3度のオリンピックに採用されることはありませんでした。

トッププレイヤーの予言

 

2013年、東京オリンピックで採用される新競技が選考される最中、世界ランク上位のイングランドのプレイヤーであるジェイムズ・ウィルストロップはスカッシュが採用される確率は低いという考えを示しました。

ウィルストロップは、

「スカッシュはオリンピックに相応しい競技と言える」

としながらも、オリンピックの種目に採用されるには金銭的な要因、競技としての経済規模の影響が大きいと語りました。

2016年のリオオリンピックでゴルフが選ばれた理由を、

「誰だってタイガー・ウッズやロリー・マキロイ(共に多額の賞金を稼ぐトップゴルファー)がいたらそっちを選ぶだろう?」

と表現し、経済効果の影響が強いと主張。

結果として2020年東京オリンピックからもスカッシュは外され、ウィルストロップの予言は当たってしまうのでした。

今後のオリンピックへの可能性

ウィルストロップが語った通り、スカッシュのスポーツ性は素晴らしく、国籍・性別を問わない老若男女が楽しめるスポーツというオリンピックに相応しい競技の条件を十分に満たしています。

スカッシュの認知度もここ数年で大きく変わってきています。

2018年ブエノスアイレスで行われたユースオリンピックのデモンストレーションスポーツとして初登場し、オリンピックとの距離を大きく縮めることに成功しました。

日本国内では東京オリンピックの開催に掛かる費用の問題が大きく取りざたされていますが、スカッシュは移動式のガラスコートが普及し始めており、開催する場所を選びません。

日本国内でもショッピングモールの中で全日本選手権の決勝を開催。世界的にはピラミッドの前で行ったという実績があります。

2024年パリオリンピックでは、残念ながらスカッシュの採用は見送られ、ブレイクダンス、スケートボード、スポーツクライミング、サーフィンの4競技内で検討されることが発表されました。

ロンドン生まれのスポーツとしてパリオリンピックを逃したのは大きな痛手かもしれませんが、その高い競技性が再認識されれば、今後のオリンピックで採用される可能性は十分あるといえます。

高い知名度と多くのプレイ人口で五輪採用を後押しするためにも、関係者全体のさらなる努力は、今後も求められていくでしょう。

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